経営・診断

「家康江戸を建てる」から学ぶ商品化

昨日は、「『家康江戸を建てる』は企業の物語である」というお話を書きました。本日は、その中の第4話「石垣を積む」を考察してみます。私は、この章を読んだ時に、「研究所の新技術開発を商品化して世に送り出す話」だと思いました。

(ここから物語の内容に触れますので、未読の方はご注意ください。)

主人公は、見えすき吾平と呼ばれる石切職人の親方と、見えすき喜三太と呼ばれる石積み職人の親方の二人。石切職人は、山の中に埋もれている石を切り出す仕事、石積み職人は、白の石垣を積み上げる仕事です。同じ見えすきという呼び名でも、見えているものが違います。石切では、石のどこを穿てばより四角いきれいな石を短時間で切り出せるかが分かる能力、石積みでは、運び込まれていたさまざまな形の石をどのように積み上げれば安定化させることができるかが分かる能力です。

吾平が切り出した石は、あまりに巨大すぎて運搬ができず、長い間山の中に放置されていました。吾平の願いは、その巨石を搦手門の隅角に使われること。最終的には、喜三太の進言で江戸に運搬することができるのですが、石は切り分けられて大手門の鏡石として使われます。

この二人の関係は、さしずめ、基礎研究所の研究者と、事業部の商品開発エンジニアの関係に似ているように思います。研究者の吾平は、これまで世の中にない素晴らしい技術を発明しましたが、欠点もありなかなか製品に搭載できずにいます。事業部の開発エンジニア喜三太は、その技術の尖った部分は少しなくしても、世の中に受け入れられる形で製品に仕上げ、世に送り出しました。どちらが正しいかということではなく、それぞれの役割は異なるものですし、必要な能力も違うということですね。

さらに言えば、基礎研究だけでも、事業開発だけでも、この製品はできあがりません。それぞれが役割を果たすことによって世の中の役に立つ製品ができあがるということですね。最適な組織設計はどのような形なのかは、どの企業にとっても永遠の課題ではあります。