経営・診断

一澤信三郎帆布物語

事業承継では、いろいろなトラブルが起こり得ます。事業承継時のトラブルの事例としては、一澤帆布工業株式会社の事例があります。兄弟間の裁判での争いの報道もありましたので、今でも事業承継のトラブルの事例として取り上げられます。先日参加した事業承継の勉強会でも取り上げられたので、関連する書籍を改めて読んでみました。

菅 聖子(著)「一澤信三郎帆布物語

簡単にトラブルの概要を記載しておきますと、本の題名にもなっている一澤信三郎氏が父親と一緒に一澤帆布工業を経営しており、父親が亡くなった後に遺言状に従い経営権を承継しようとしたのですが、兄の側からそれより新しい日付の遺言状が提出され、裁判で争った結果、最初は兄側が勝訴。そのため、会社を出て、一澤信三郎帆布という別会社を立ち上げることになるという経緯です。(その約4年後の裁判で、最終的には最初の遺言状が認められています。)

私は、本書を読む際に、共感した部分に蛍光ペンで線を引きながら読みました。最初は、上記のようなトラブルに関することに線を引いていたのですが、次第に、別会社の一澤信三郎帆布を立ち上げ準備や立ち上げた後の経営者の心構えや経営課題への対処に関する部分への線が多くなっていきました。前回、事業承継においては、財産の承継だけではなく経営権の承継、現状分析を踏まえた事業の磨き上げが必要、というお話をしましたが、まさにそのように思います。

本書のお話は、株式を生前贈与で後継者に渡しておくことの重要性を示す事例として使われることが多いと思います。遺言状を書いたから安心していると、それだけでは不足というわけですね。しかし、それだけではなく、事業承継とは何なのか、を感じさせてくれる一冊です。事業承継を検討されている方は、一度本書を手に取られてはいかがでしょうか。